KASHIWA Daisuke 88 interview & digest
Q:なぜ、今作はこれまであった打ち込みやオーディオ編集をやめ、
ピアノのみのアルバムとなったのでしょうか?
まず単純に、ピアノアルバムというものに対しての憧れがありました。
クラシックはもちろん、現代音楽でもピアノアルバムがとても好きで、いつか自分も作りたいと音楽を始めた頃から思い続けていました。
また、コンピュータと音楽ソフトがどんどん進化していき、自分がやや取り残されつつある(笑)中で、改めて自分が何を作りたいのかを考えていました。
そしてその答えが原点回帰というか、一つの楽器、ピアノの88個の音のみを使って自分の音楽をきちんと表現するという事でした。
その中には、作曲家としての自分自身を試してみたいという気持ちもありました。
僕の前作までのアルバムが切り絵や貼り絵、いわゆるコラージュの感覚だったのに対し、今作は一本の鉛筆のみでしっかり描くという感覚で、そういう意味合いでも、自分の音楽の核になる部分をストレートに表現できた作品だと思います。
ただ、仕上がった作品は一聴すると純粋なピアノアルバムですが、打ち込みやオーディオ編集をおこなっていない訳ではありません。
これまでとは目的は違いますが、様々な手法や技術を取り入れて制作しています。
そういう意味で、とてもエレクトロニカ的なピアノ作品だと僕は思っています。
Q:なぜ、ピアノという楽器を選んだのですか?
ピアノの音が好きだから、です。
もちろん、クラシックから現代音楽においても基本になる楽器であるとか、一つの楽器で音楽を表現する上で一番適しているとか、色々理由は挙げられますが、とにかくピアノの音に惹かれるんですよね。
地響きのような低音から、優しい雨のような高音まで、奏法によってどんなイメージでも表現できる素晴らしい楽器だと思います。
世の中には色んな楽器がありますが、ピアノの音色の澄んだ美しさは、やっぱり僕の中で別格です。
Q:最近はマスタリング・エンジニアの仕事も多くなさっているようですが、音楽家である時の自分とエンジニア時の自分と何か違いはありますか?
また、自らのエンジニアとしてセールスポイントは何だと思いますか?
元々エンジニア的な知識や技術は、自分の音楽をよりよく表現する為に始まったものなので、一心同体というか 大きな違いは感じられないです。
ただマスタリングは、アーティストさんの大事な音源を預かって作業するものなので、責任感がやっぱり違いますね。
分かりやすく言えば、単純に趣味と仕事の違いみたいなものですかね。
あとセールスポイントですが、リアルタイムでアーティスト兼エンジニアだという事でしょうか。
仕事として受ける側だけでなく、依頼する側、アーティストとしての気持ちもよくわかると思います。
一昔前、僕がまだバンドをやっていた頃は、CDを作るのなんて、スタジオでレコーディングして、ミックスもプロのエンジニアが手がけてっていうのが当たり前だったんですが、コンピュータで自分で音楽制作を始めたとき大きな壁にぶつかったんです。
もちろん自分の音源は良くしたいって思いは十分にあったのですが、自宅環境と商用スタジオではやっぱり大きな差があって、例えば自宅だとモニター環境に偏りがあってミックスにバラツキがあったり、音圧を稼ぎたいあまりマスタリング前の時点で音が歪んでしまっていたり・・。
ましてやプロのエンジニアさんのテクニックなんて、簡単に真似できるものではありませんし。
今では良い経験ではありますが、良くしようと思ってやった事が裏目に出た事がたくさんありました。
そういった偏りや歪みも個性だ、という見方もできますが、本人が望んでないことはできる限りマスタリング、もしくはマスタリング前の段階で積極的に補正できれば、と僕は考えました。
もちろん僕の方での処理がイメージと違うとかの場合は、気に入って頂けるまで何度でもやり直しますし、限りなくアーティストサイドに近いマスタリングサービスという事がセールスポイントですね。
Q:今後はまた打ち込みの曲もやるのでしょうか?
もちろんやると思います。
ですが、次作でガンガン打ち込み、とかでは無いかもしれません。
僕はこれまで専門的な音楽の勉強をしてきた訳ではないので、実はいつも自分の作る物に自信が無くて、だからこそアルバム一作一作が勉強だと思って作ってるんです。
ロープレでいう経験値みたいなものですね。
単純ですが、色んな知識と経験を積めば、最終的に自分が本当に納得できるもの、まだ見ぬ理想郷のような音楽が作れるんじゃないかと。
これまでも各アルバム毎にコンセプトを決め、割とハッキリと個性の違うものを作ってきましたが、まだまだやりたい事はたくさんあって、気の向くままに一枚ずつ作っていこうと思っています。
まだまだ先は長そうですが、いろいろと作っていこうと思っていますので、僕の音楽を聴いて下さっている方には楽しみに待っていて頂ければと思います。
最終的に最高傑作をものにできるよう頑張りますので。。
それでは、どうもありがとうございました。
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